法単語解説まとめたし

法律単語を辞書じゃなくて使う意味でまとめる。

既判力とその時的限界。

既判力とその時的限界。

形成権などを見たときの既判力の遮断効はどうなるのか。

最近自分で作ったレジュメをそのまま上げてるのですが、読みにくいですねえ。

 

以下条文は何もなければ民事訴訟法とする。

 

・既判力

114条1項 確定判決は、既判力を有する。

確定判決で示された判断はその後の訴訟で基準となる。

 

・判決の確定時期

116条

判決は控訴若しくは上告の提起、138条第1項の申立て又は第357条若しくは第378条第1項の規定による異議の申立てについて定めた期間の満了前には、確定しないものとする。

2項 判決の確定は、前項の期間内にした控訴の提起、同項の上告の提起又は同項の申立てにより遮断される。

 

→不服申立ての手段が尽きた時に確定する。

例)上告審の判決言渡しがあった時、上訴期間の徒過など。

例外)再審。

 

・形成力

形成判決の確定により法律関係の発生・変更・消滅が生ずることを指す。

(形成の訴え…判決によって権利または法律関係の変動を生じさせる形成判決を求める訴え。離婚訴訟や株主総会決議取消訴訟など。)

 

・執行力

給付判決によって命じられた給付義務の履行を民事執行手続によって強制的に実現させることができる効力。

(給付の訴え…給付命令付きの判決を求める訴え。貸金返還請求訴訟など。)

確定した給付判決は債務名義となる。(民執22条1号)

債務名義…それを基本としてその給付請求権について強制執行が出来る文書。

 

<作用>

1.積極的作用…後訴裁判所の判断は、既判力ある判断を前提とされなければならない。

2.消極的作用…当事者は、既判力ある判断に反する主張・立証をすることを出来ず、

裁判所も、既判力ある判断に反する主張を審理することは出来ない。

前訴確定判決の既判力は後訴で作用する。

1.前訴と後訴の訴訟物が同一の場合。

2.前訴の訴訟物が後訴の訴訟物と先決関係にある場合。

3.後訴請求が前訴請求と矛盾する場合。

 

<根拠>

1.制度的効力

民事訴訟の存在意義とは、私人間の紛争の強制的解決(紛争解決説)

→一度争ったことはもう争えないようにしないと、実効的な紛争解決が出来ない。

2.手続保障の自己責任

当事者は前訴で訴訟法上の手続保障が与えられた。

→争う機会は十分に与えられていたのだから、敗訴しても自分の責任である。

 

・既判力の時的限界(基準時、標準時)とは?

既判力はいつの時点の訴訟物たる権利の存否の判断に生ずるのか。

→事実審の口頭弁論終結時

判決の時間的・資料的制約。

当事者は事実審の口頭弁論終結時まで事実に関する資料を提出することが出来、終局判決もそれまでに提出された資料を基礎にしてなされるから。

 

・必要性。

既判力は訴訟物の存否の判断につき生ずる。

しかし、訴訟物たる実体法上の権利義務関係は、時とともに変動しうる。

→訴訟物の存否の判断は、ある一時点での存否の判断にすぎない。

 

つまり。

既判力は基準時のみにおいての訴訟物の存否の判断に生ずる。

基準時前に訴訟物たる権利が存在したかどうか。

基準時後に訴訟物たる権利が消滅したかどうか。ということには既判力は生じない。

なので

基準時前に訴訟物たる権利が存在したこと。

基準時後に訴訟物たる権利が消滅したこと。は後訴において主張できる。

 

 

 

では、基準時における訴訟物たる権利の存否の判断を後訴で争えるか。

「基準時前から生じていた事由をもって争う場合」と

「基準時後に生じた事由をもって争う場合」とで既判力の根拠を踏まえ考えていく。

 

「基準時前から生じていた事由をもって争う場合」

1.制度的効力

基準時までに出された主張・証拠に基づいて下された判断について、後訴で基準時前から生じていた事由をもって争えるようにしてしまうといつまでも紛争が確定的に解決されることが無い。

2.手続訴訟の自己責任

基準時前に生じていた事由は基準時までに主張することが出来たはずである。

 

よって基準時より前に生じていた事由をもって後訴で争うことはできない。

これを既判力の遮断効という。

※当事者がその事由を前訴において主張することが主観的に不可能だった場合

例)基準時直前に行われた第3者弁済を当事者が知り得なかった時。

通説…当事者の主観的態様に左右されない制度的効力を持たせるために遮断効を認める。

有力説…前訴での主張に期待可能性がなく、実質的に手続保障が与えられてないために遮断効を認めない。

 

「基準時後に生じた事由をもって争う場合」

1.制度的効力

基準時後に生じた事由を主張することは、前訴で解決された紛争を蒸し返すものではないため、前訴での紛争解決の実効性を失わせるものではない。

2.手続保障の自己責任

基準時後に生じた事由は基準時に主張できない。

 

よって、基準時後に生じた事由をもって後訴で争うことは出来る。

既判力による遮断は無い。

 

基準時後の形成権の行使とは。

基準時前に生じていた形成権を基準時後に行使することが出来るのか。

・形成権

権利者の一方的意思表示によって法律関係の変動を生じさせることが出来る権利。私法的法律関係の形成は当事者の合意によらなければならないという原則に対する除外をなすものであるから契約または法律によるものでなければ、この権利は認められない。

・問題となる理由

形成権は権利行使の意思表示によって初めてその効果が生ずる。(訴求債権を変動させる)

(民121条参考)

弁済・免除などはそれがされた時点で訴求債権を消滅させている。

 

つまり、形成権行使の意思表示により生じた効果を基準時後に生じた事由と解する余地があるかもしれないということ。(遮断されない)

 

取消権

(かつて)(大判大14.3.20.民集4-141)

「判決ニ因リ確定シタル請求ノ原因タル法律行為ガ口頭弁論終結後ニ取消サレタルトキハ異議ヲ主張スルコトヲ要スル口頭弁論ノ終結後ニ其ノ原因生ジタルモノトスル。」

→遮断効を否定。

 

(現在)(最判昭55.10.23民集23-5-747)

「売買契約による所有権の移転を請求原因とする所有権確認訴訟が係属した場合に、当事者が右売買契約の詐欺による取消権を行使することが出来たのにこれを講師しないで事実審の口頭弁論が終結され、右売買契約による所有権の移転を認める請求認容の判決があり同判決が確定したときは、もはやその後の訴訟において右取消権を行使して右売買契約により移転した所有権の存否を争うことは許されなくなるものと解するのが相当である。」

→遮断効を肯定。

なお、この判決などが特殊であるから必ずしも肯定すると限らないという見方もある。

 

・相殺権

「相殺は当事者双方の債務が相殺適状に達した時において当然その効力を生ずるものではなくて、その一方が相手方に対し相殺の意思表示をすることによってその効力を生ずすものであるから、当該債務者名義たる判決の口頭弁論終結前には相殺適状にあるにすぎない場合、口頭弁論の終結後に至ってはじめて相殺の意思表示がなされたことにより債務消滅を原因として異議を主張するのは民訴法545条2項(現民執35条2項)の適用上許される」

→遮断効の否定(こちらは一貫している)

 

・白地手形補充権(最判昭57.3.30民集36-3-501)

「手形の所持人が手形要件の一部を欠いたいわゆる白地手形にもとづいて手形金請求の訴え(以下前訴)を提起したところ、右手形要件の欠陥を理由として請求棄却の判決を受け、右判決が確定するに至った後、そのものが右白地部分を補充した手形に基づいて再度前訴の被告に対し手形金請求の訴え(以下後訴)を提起した場合においては、前訴と後訴とはその目的である権利である権利又は法律関係の存否を異にするものではないと言わなければならない。そして、手形の所持人において、前訴の事実審の最終の口頭弁論期日以前既に白地補充権を有しており、これを行使したうえ手形金の請求をすることが出来たにもかかわらず右期日までにこれを行使しなかった場合には、右期日ののちに該手形の白地部分を補充しこれに基づき後訴を提起して手形上の権利の存在を主張することは、特段の事情の存在が認められない限り前訴判決の既判力によって遮断され許されないものと解するのが相当である。」

→遮断効を肯定。

 

このような状況で建物買取請求権についての最高裁の判断がまたれていた

 

<学説>

通説・判例…相殺権と建物買取請求権を除いて、遮断効を肯定。

・形成原因は、前訴の訴訟物に付着する瑕疵であり、判決によって流される。

・手続保障の自己責任

・取消権:取消しよりもさらに重大な無効事由が遮断されることの権衡。

・相殺権:前訴の訴訟物に付着する瑕疵ではなく、前訴の訴訟物とは別個の債権を主張する防御方法である自己の債権を消滅に帰せしめる不利益を伴う

→被告の決断の自由を尊重

※前訴で主張しなかったことに過失があったかどうかを問わない。

 

期待可能説(新堂説)

基本的には通説依拠しながら「その事由は前訴の基準時までに存在したが、その提出をおよそ期待できなかった場合にまでこれを排斥するのは手続保障を書くことになるので、その提出を認めるべきである。」とする。

 

反対説(中野)…一律遮断効を否定。

・形成権は行使によって初めて法律関係の変動を生ずる

効果が基準時前まで遡及する場合(取消権(民121条)、相殺権(民506条)、解除権の一部(民545条))でも、遡及するのは法律効果にすぎず、その要件となる行使行為自体は基準後である。

・既判力は、基準時に訴訟物が存在していたことを確定するのに→将来にわたって取消権などの行使により消滅する可能性がないことまでは確定しない。

確定するのは消滅する可能性をもった請求権自体である。

・通説が指摘する無効との権衡。

→無効か取消しかは立法政策上の問題であり、瑕疵の重大性の問題ではない。

・形成権の行使可能期間が奪われる(訴訟法が実体法上の権利を制限してしまう。)

例:取消権(民126条)…遮断すれば民法上認められた取消権者の利益が不当に害される。

・通説:債務者が防御を引き伸ばして執行を止めさせてはならないとの法律政策的配慮

すると、通説によれば、債務者が帰責事由なく基準時までに取消原因を知り得なかった場合には請求異議を許さなければならない。

そして当事者の主観的事情により既判力の効果を異にすると、既判力の範囲が客観的な明確制を欠き、既判力の趣旨と相容れない。

※例外として、実体法上の理由又は信義則により後訴での主張が許されない場合がある。

例:前訴で取消権を行使でき、かつそれが要請されるところであったのに、わざと主張せずに、強制執行がされてから主張する場合は信義則によって封ずる。

 

提出責任説(上田)

既判力の遮断効に服するか否か=形成権者が前訴で提出しておくべき責任があったか否か

提出責任の有無を決定する要因

1.手続保障が与えられていたことを条件に生ずる、法的安定要求、訴訟経済の要求、執行妨害の防止要求など(講義の法的安定要求)

2.前訴での形成権の行使が客観的に期待できない場合には、後訴での提出が許されるべきであるとの要請(実体関係的手続保障要求)

1>2 遮断効肯定  1<2 遮断効否定

取消権:客観的に前訴で取消権を行使して争っておくべきだったかによる。

解除権:原告が解除権者なら遮断効否定。逆なら肯定。

相殺権:遮断効否定。

 

形成権行使責任説(河野)

既判力の遮断効に服するか否か=形成権者に形成権行使責任を生じるか否か

民法上の形成権の行使期間中でも、追認による取消権の消滅がある他(民122・125条)

形成権の相手方主導で形成権が消滅する場合もある。(民20・547条等)

つまりこれらの場合と同視できる事情があれば、形成権者に行使責任を負わせ、形成権の基準時後の行使を遮断して良い。

1.相手方からの形成権を行使するかどうかを決定するようにとの要求(例:訴訟提起)

2.形成権者にもあいてとの関係でその決定をすることが強く期待される地位にある。

3.形成権者が形成権を行使すべきかどうかを自律的に判断しうる

→取消権・解除権・建物買取請求権:形成権行使責任肯定(遮断される)

相殺権:否認(遮断されない)

なぜなら早期に相殺権を行使すべきという評価を下した規定は無い

遮断効を認めると自働債権の強制貫徹機能を阻害し、相殺権者に過多な要求となる。

<建物買取請求権に関する学説>

積極説

・建物買取請求権は、取消権のように前訴の訴訟物に直接付着する瑕疵ではなく、前訴の訴訟物たる建物収去土地明渡請求権とは別個独立の権利である。

・建物買取請求権は、建物の社会的効用を保護するとともに、賃借人に投下資本の回収を図らせるという政策的見地に基づく。

・建物買取請求権は、建物収去土地明渡請求権が認められることを前提として、自己所有の建物の所有権を賃貸人に移転するという犠牲を伴い、相殺権に近い。

他方で、借地権者は前訴で賃貸借契約の終了を争う。

よって、明渡義務の存在を前提とした建物買取請求権の行使を要求するのは難しい。

・基準時後の建物買取請求権の行使によって、新たな法律関係が形成され、建物収去土地明渡請求権に新たな変動を生じさせる。

 

消極説

請求異議事由にならない(既判力による遮断)

・前訴で主張できたものを後訴でも主張できるとするのは、訴訟不経済。

・建物買取請求権は取消権と同様の防御機能を持つ抗弁的なものなので、借地権者は前訴で建物買取請求権の行使についての決断を促されている。

 

折衷説

2つの場合に分けて結論を。

1.賃借人が賃貸人の主張する正当事由の存在を争ったり、建物譲受人が賃借権の譲渡又は転貸が不適法と賃貸人の主張を争ったりした場合。

つまり建物買取請求権を基準時に行使することが期待できなかった事情、又は「法律上の障害」があったときは、請求異議事由となる。

 

2.賃借人が賃貸人の主張する正当事由を争わなかったり、建物譲受人が賃借権の譲渡または転貸が不適法であるとの賃貸人の主張を争わなかったりした場合。

法律上の障害がなかったといえるので請求異議事由にならない。

 

参考文献

最高裁判所平成7年12月15日第二小法廷判決(民集49巻10号3051頁)

・ジュリスト民事訴訟判例百選第5版166頁

・既判力の時的限界(2)-建物買取請求権

・中野貞一郎「民事裁判入門」有斐閣 など

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